血中AMH濃度と繁殖成績との関連性は多くの研究者や臨床獣医師が注目しています。
日本国内においては黒毛和種におけるAMH濃度の測定、臨床研究が盛んですが、その一方で国内のホルスタイン種のAMH濃度の報告はあまりありません。
当然ホルスタイン種ですから、世界中に存在する種であり、「日本のホルスタイン種のAMH濃度は?」という疑問に答える必要はないかもしれません。
Nawazら(J.Dairy Sci.2018)は2905頭のホルスタイン種の未経産牛のAMH濃度を測定しています。上の図はそのヒストグラムです。
平均値は438.5pg/ml、中央値は333.3pg/mlと報告しています。ミシガン州立大学のグループの研究ですので、米国のホルスタイン種です。
私が測定したホルスタイン種のAMH濃度をみてみます。
図.ホルスタイン種のAMH濃度ヒストグラム
図.産歴別AMH濃度
Nawazらの報告よりもやや平均値も高くなりました。AMH測定系は異なりますので、簡単に比較してはよくないですが、おおよそ300~600pg/ml程度の牛が多数を占めるということが分かります。
89頭と例数は少ないですが、産歴でAMH濃度を観察すると、2産で低くなって、3産で高くなっています。
例数が少ないので統計パワーも及びませんが(有意差はでませんが)、この差は興味深いと私は思いました。
繁殖成績を産歴別に捉えて考えるとき、2産目は受胎に苦労する牛が少なからずいるという事実があるからです。
おそらく2産目を迎えた牛には「繁殖性が良い牛」と「繁殖性が悪い牛」が混在し、スムーズに3産にいく牛は「繁殖性が良い牛」が自然選抜されているのではないかと私は考えています。
今後OPU事業の展開を考えると、ゲノム、血中AMH濃度、卵巣の胞状卵胞数の3点に注目して繁殖技術を提供していきたいと考えています。胞状卵胞については次の機会に…
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