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伏見 康生
大川 洋明

顆粒膜細胞腫とAMH濃度

牛の臨床獣医師または繁殖技術者であれば知っている卵巣疾患、顆粒膜細胞腫


これは血中AMH濃度測定によって診断することが可能です。


Anti-Müllerian hormone profiles as a novel biomarker to diagnose granulosa-theca cell tumors in cattle - PubMed (nih.gov)

宮崎大学の北原先生が世界に先駆けて発表しています。

私も北原先生の論文発表を読んでから、症例に遭遇しました。


フレッシュチェックで嚢腫様でしたが再検査も変化なく、卵巣実質の構造に変化が見られました。


aは初診時(正確にはhCG投与後)、bはaの17日後の卵巣所見です。

あれ、嚢腫ではない、と思ったのがaの画像確認時、そしてbをみたときに「これはなにかおかしい」と感じました。

鑑別診断としては卵巣嚢腫、卵巣膿瘍(周囲膿瘍)、卵巣腫瘍などが挙げられますが、私は卵巣腫瘍、とくに顆粒膜細胞腫を疑いました。

早速農家さんへ説明をして採血を実施し、臨床検査機関へAMH測定を依頼しました。

結果は36.5ng/ml


ぶっとんでいます。

いかに高いかというと、前のブログのホルのAMH濃度は平均462.9pg/ml

単位を統一すると

顆粒膜細胞腫 症例 36500pg/ml

健常牛 平均値 462.9pg/ml

この症例が圧倒的にAMH濃度が高いことが分かります。

明瞭な腫瘍診断のバイオマーカーですね。

畜主さんに

このままでは妊娠する可能性がほぼないこと

完治(妊娠させる)には摘出以外にないことを説明し、立位の左けん部切開にて卵巣摘出を実施しました。


画像所見そのままの割面でした。

病理検査においても顆粒膜細胞腫の診断が下りました。

この症例はその後妊娠し、2回の妊娠、出産をしました。

顆粒膜細胞腫は診断(臨床診断)が非常に難しいです。

臨床獣医師であってもその診断が正しくできているかは分かりません。卵巣の触診のみで判断することはもちろん不可能(大きいから腫瘍という理論は乱暴です)ですし、超音波の画像所見も様々です。

現時点で最も信頼度が高いのはAMH濃度測定ですが、高い値を確認していたが、その後数値が下がり、自然治癒した?といわれる症例も報告されています。


Evidence of Spontaneous Recovery of Granulosa-Theca Cell Tumour in a Heifer: A Retrospective Report - PubMed (nih.gov)


私の経験でも同僚が疑わしい症例をみつけてAMHを測定したところAMHは7ng/ml(7000pg/ml)でした。

私はおそらく間違いないだろうと判断していましたがオペには至らず時間が経過すると卵巣は小さくなり、臨床的には治癒した、となりました(妊娠したかは確認できず)。

顆粒膜細胞腫におけるAMH濃度の上昇は、いわゆる機能性腫瘍です。

腫瘍細胞となった顆粒膜細胞がAMHを分泌することで卵巣活動を強く抑制し、反対側の卵巣を静止させるために繁殖能力を阻害するというのが一般的な理解です。

この機能性腫瘍細胞の量がAMH濃度を決定するため、AMH濃度においてもかなりの差がみられるのだと思います。

当然、腫瘍を疑う卵巣の反対側卵巣が活動しているのであれば摘出を考えず、私はまずは反対側卵巣・子宮での妊娠を目指すと思います。

ですので、AMH濃度が著増していない限り、摘出の判断は難しくなります(私的に)。

あくまで臨床的な診断、判断は獣医師にしかできません(最終的な意思判断は畜主さんですが)ので、臨床所見など含めて総合的に判断することをおすすめします。

私の紹介したCase reportは以下のリンクから読むことができます。


Full article: Clinical diagnosis of bovine granulosa cell tumour in a Holstein cow using plasma anti-Müllerian hormone concentration: a case report (tandfonline.com)


初めて英文での投稿をチャレンジした論文です。

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